智清庵店主と自然薯

宝物だった幼少時代

草木をかき分け道なき道を行きがけに拾った棒きれ一本にぎりしめて、祖父の後を追い辺りに目を凝らしつつ、落ち葉の山に分け入った。
私が生まれ育ったのは、自然が豊かに残る福岡県の田舎町。
県内有数の一級河川に横たわる平野と小山が点在とする農業が盛んな地域でした。
当時は自然薯といえば、当然、山に自生するもので、ハート型の特徴的な葉っぱを頼りに山中を探し回ってやっとの思いで見つけ丁寧に掘り起こすというものでした。
幼少時代の私もまた、大人たちに手を引かれ、まるで宝物を探すような眼差しで、その手がかりを探し、地中へとまっすぐつづく弦を見つけ大喜びしたことを覚えています。
その光景は、自然薯の味とともに今でも色あせることない原風景として私の心の根っこに紡がれています。

「のこしたい」という想い

今は、スーパーマーケットに行けば、食料品は、なんでも手に入る豊かな時代です。
誰もがさほど気に留めることもなく、当然のようにこの豊かな時代の恩恵に与っています。
ご多分に洩れず私もその一人です。
しかし、魚の本当の形を知らずに「切り身で泳いでいる」と思っている子供がいるとまことしやかに言われているこの時代に怖さを感じ、昔ながらの食品や食文化が失われていくことに心のささくれを同時に覚えます。
「昔ながらのものを子供には食べさせてあげたい」
私のひとりよがりですが、自然薯の味を子供たちにのこしたいという想いを心に抱くようになりました。

子どもに食べさせてあげたい自然薯

ひと昔前は自然薯といえば、私の幼少時代もそうだったように山に自生しているものでした。しかし、現在では、先人たちの尽力により栽培方法が確立され自生している薯と遜色のない自然薯の生産ができるようになりました。
管理された農地で、出荷までの間、手間暇かけて安心してお召し上がりいただける自然薯を智清庵はお届けいたします。
お子様に食べていただきたいという想いを込めて。

山芋とは総称で、その中の１種類として「自然薯」があります。
他にはつくね芋、大和芋、一般的にスーパー等でよく目にする長芋などがあります。
山芋の中で「自然薯」のみが日本原産の在来種となります。他は中国原産です。

自然薯は正式名ヤマノイモと呼び、学名がDioscorea japonica。
学名にジャポニカがつくことからも分かるように日本原産で、古くから日本人に親しまれてきました。
日本最古の歴史書である古事記にも自然薯と考えられる記載があり太古より滋養食として珍重されてきたようです。
江戸時代には、献上品として将軍徳川家康公に納められました。
現在でも、東洋医学では、「山薬（さんやく）」として虚弱体質を補い、胃腸の調子をよくし、暑さ寒さに耐え、耳や目をよくし、長寿を保つ効果が期待できるとして利用されています。

女性にうれしい自然薯

腸内環境を整える食物繊維が豊富です。カロリーが抑えめで腹持ちが良いこともダイエットとしては嬉しいポイントです。
滋養強壮、疲労回復、アンチエイジング、美肌など、女性にうれしい効果が期待できます。

男性にうれしい自然薯

精力剤として昔から重宝された自然薯。
「山の鰻」と呼ばれるほど滋養によいとされてきましたが、その効果は、現在のところ学術的に裏付けるハッキリとした根拠はありません。
しかし、含有するアルギニンやムチンの働きで男性を元気にするという報告もされています。
もちろん、滋養強壮、疲労回復など働く男性にうれしい効果が期待できます。

年配の方にうれしい自然薯

自然薯にはディオスゲニンと言う物質が含まれており、これは若さの維持やホルモンバランスに関係しているDHEAを増やす役割があるということが分かってきたようです。
DHEA（デヒドロエピアンドロステロン－Dehydroepiandrosterone）は脳内の神経細胞の情報伝達に関与し、神経伝達物質ドーパミンを適切な量に戻したり、ホルモンの分泌を促進させる効果があるとされています。

●五訂日本食品標準成分表でみる自然薯の栄養成分量

自然薯（ジネンジョ）の栄養成分量
下の表に生の自然薯の可食部１００ｇあたり含まれる成分の量を載せています。